ハイオレイックヒマワリ油の特性と応用
長谷川 治
1.はじめに
近年、地球的規模での環境汚染に対する関心の増大とともに、自然化粧品や酸化防止剤などの添加物を使用しない化粧品の要望が強くなっている折、そのベースとしての油脂にも注意を向けていく必要がますます高まっている。
古来、日本では椿油が化粧品として使用されてきたが生産量が少なく、多方面に使用することが困難であり、またオリーブ油や他の油脂では酸化安定性や、色、においなどで問題がある中で新しい油脂としてハイオレイックヒマワリ油が注目を集めつつある。
2.ハイオレイックヒマワリ油の概略
ヒマワリ(向日葵、Helianthus annuus)は中央アメリカ原産のキク科に属する一年生の草木で茎の高さ2〜3メートルに達し、茎の頂に直径10〜20センチメートルの大きな頭花を数個つけ、1センチメートル内外の灰白色の種子を生ずる。種子には40%前後の油が含まれている。自然の太陽の光さえあればどんな土地でも無農薬でも育つ強健な作物である。
普通のヒマワリは、ソ連、ヨーロッパ、アルゼンチンなどで栽培、採油されているが、ハイオレイックヒマワリはアメリカ合衆国のノースダコタ州、カリフォルニア州やアルゼンチン等で多く栽培、採油されている。
普通のヒマワリ油はリノール酸が65%と主成分であるが、ハイオレイックヒマワリ油はオレイン酸が主成分になるように品種改良されたヒマワリから採油したものである。
普通のヒマワリ油は1988年で800万トン生産されているがハイオレイックヒマワリ油は2万トン生産されている。
現在は、高安定性液状油として揚油やスプレーオイル、マーガリン、その他加工油脂など主に食用に使用されているが、化粧品原料としても注目されている。
3.ハイオレイックヒマワリ油の特性
(1)脂肪酸組成
ハイオレイックヒマワリ油は表1のようにオレイン酸が80%を占め、リノール酸が10%、パルミチン酸、ステアリン酸が各4%である。他の液状油と比較して圧倒的にオレイン酸が多く、椿油の組成に近い。
(表1)ハイオレイックヒマワリ油とその他の油の主な脂肪酸組織