■環境にやさしいことは、健康にもやさしい
せっけん製品の利用から始まる、新しい生活
旅行にスポーツに、自然と触れあうアウトドアにはもってこいの季節。「森林との共生」をコンセプトに、環境にやさしいせっけん製品の利用を積極的に進めているキャンプ場がある。利用者の満足度も高く、口コミで、その評判が全国に広がっているという。人気施設の環境への取り組みを、紹介しよう。
●人気の5っ星キャンプ場
都心から高速道路で3時間余り。磐梯朝日国立公園の南端に位置する安達太良山の山懐に「日本オートキャンプ協会」(JAC)が最高評価(5っ星)に認定したオートキャンプ場「フォレストパークあだたら」がある。現在、協会認定の5っ星キャンプ場は全国で11カ所しかなく、地元の福島県はもとより、首都圏を中心に全国各地からの利用者でにぎわっている。
同キャンプ場は98年、「森林との共生」(森林に遊び、学び、働き、守り、暮らす)を基本コンセプトに「福島県民の森」内にオープンした。40ヘクタールの敷地には、温泉施設完備でセミナーなども開けるビジターセンターと、5人利用と7人利用の2タイプ計20棟のコテージ、トレーラーハウス10台を含む180のテントサイトがあり、年間5万人の利用客があるという。
フォレストパークあだたらから望む安達太良山。
コテージには食器や寝具、内風呂などが完備している
設計は自然景観とマッチした建物の設計を手がけているイギリス人建築家のトム・ヘネガンさんで、すべての建物が森の中に溶け込むデザインになっている。また、エリア内の道路にはU字溝を設けず、透水性舗装が施されている。ソフト面でも基本コンセプトを忠実に守り、エコロジーや健康をベースにした施設運営を全面に押し出している。
オートキャンプ場のフロントや、温泉、ショップ、カフェ、森林ライブラリー、レクチャーホールなどがあるビジターセンターには写真のような掲示板が。自然環境を守るために、細かなルールが決められている
電話でキャンプ場の予約申し込みをする際、驚かされることがある。それは、合成化学物質が入ったシャンプーやリンス、ボディソープ、食器洗い用合成洗剤の使用はできないことが伝えられ、了解した上でないと予約が入れられないことだ。施設を運営している「ふくしまフォレスト・エコ・ライフ財団」森林交流推進課の佐藤重敏さんは、こう言う。
「全国のオートキャンプ場のなかでも、最も厳しいきまりがある施設かもしれませんが、キャンプ場周辺が水源地帯になっていることもあり、水環境への負荷を減らし、きれいな水と豊かな自然を守るためです。施設の設立趣旨も踏まえ、利用者の皆さんにお願いしています」
施設内での洗い物も合成洗剤の使用は不可。環境への負荷を減らすという理念に基づいてのルールだ
露天風呂もある温泉大浴場をのぞいてみると、備え付けのシャンプーやリンス、ボディソープは天然油脂が原料のせっけん製品「パックスナチュロン」である。
これらのせっけん製品は、施設外に排出されても、水の中のカルシウムと結びついてカルシウムせっけんとなり、それが微生物や魚のえさとなって、自然界を循環する。
ところが、化学合成されたものは自然界では分解されにくい。
露天風呂もある温泉浴場で使われているシャンプーやリンス、ボディーシャンプーは、天然成分のせっけん製品であるパックスナチュロン
「フォレストパークあだたら」のように、自然にやさしいせっけん製品を使おう、という動きは、全国各地で広がりを見せ始めている。
神奈川県横浜市の水源地として水源かん養林が広がる山梨県南都留郡道志村では、オートキャンプ場の「花の森オートキャンピア」や「スカイバレーキャンプ場」などで「飲み水となる水源の環境を守ろう」と、「パックスナチュロン」をはじめとするせっけん製品の使用を施設利用者に呼びかけている。
ビジターセンターの売店では地元の製品やキャンプグッズともに、
パックスナチュロン製品が売られている